第2章 根拠法令関係、使用基準、設計
当初、溶接継手は特殊継手としてされていたが平成12年に施行された建設省告示第1463号により、現在では溶接継手も圧接継手と同様に一般的な継手として扱われるようになっている。
平成12年建設省告示第1463号 鉄筋の継手の構造方法を定める件
- 建築基準法施行令(以下「令」という。)第十三条第二項本文(第十七条の四その他において準用する場合を含む)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造耐力上おける引張の最大と最小と部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第四項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方方向及び繰り返し加力実験によって耐力、靭性及び特に同号ろ柱部に設ける鉄筋継手である鉄筋と同等であることが確認された場合においては、次項から第四項までの規定による構造方法によらないことができる。
- 圧接継手(省略)
- 溶接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。
一 溶接部は失敗な溶接とし、鉄筋の軸と鋼材とは鋼材等を用いた溶接とする。ただし、建築基準法施行令第20条の許容応力度の規定に適合する方法を採用することができる。
二 溶接継手の溶接部は、割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとする。
三 溶接継手の溶接部は、建築基準法施行令第20条の規定及び引張強さの性能以上の性能を有する溶接材料を使用すること。- 機械式継手(省略)
溶接継手が一般的な継手として認可されたことにより圧接継手-溶接継手-機械式継手が容易に変更できることが可能となった。また、同時に特殊継手の法的枠組であった建設省(現国土交通省)住宅局建築指導課長通達が平成12年の地方自治法改正に伴い失効し、特殊継手に対する明確な法定の評定という位置づけになった。
※1 第十三条第二項(鉄筋の継手及び定着)
主筋又は耐力壁の鉄筋(次項の規定において「主筋等」という。)の継手の重ね長さは、継手を構造材料における引張の最大と最小の部分に設ける場合にあっては、主筋等の径(径の異なる主筋等をやむを得ぬときは、細い方の径によるものとする。)の二十五倍以上とし、継手を引張の最大と最小の部分以外の部分に設ける場合にあっては、これにかかわらず、主筋等の径の四十倍以上とする。ただし、国土交通省令で定める構造方法による継手及び定着については、この限りでない。
※2 第十七条の四(鉄筋鉄骨コンクリート造に対する第六節の規定の準用)
鉄筋鉄骨コンクリート造の柱又は建築物の構造部分の構造耐力については、前一節(第十三条、第十四条及び第十五条)の規定を準用する。この場合において、第十三条第二項中「鉄筋の継手及び定着」とあるのは「鉄骨及び鉄筋の継手及び定着」と、「鉄筋」とあるのは「鉄骨及び鉄筋」とする。
2-1 適用範囲、性能
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適用範囲
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄筋の溶接継手に適用する。 -
継手性能の分類
A級継手
2020 年版「建築物の構造関係技術基準解説書」鉄筋継手判定基準による。
2-2 設計(継手種類と使用の可否)
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継手の使用の可否及び継手の有無による影響は、柱、はり、壁等の構造部材ごとに考える。
- 継手の集中度による影響は、同じ目的のための鉄筋の断面積の50%以上を継ぐ全数継手と50%未満を継ぐ半数継手の場合に分けて考える。
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ルート1、2-1、2-2の方法で計算する場合又は平13国交告第1026号に沿う壁式構造の場合、使用してもよい継手種類、使用箇所及び集中度は表5による。ここで、ルート1の計算方法とは、令第82条各号に基づき、許容応力度計算だけをするものであり、ルート2-1、2-2の計算方法は、それぞれ令第82条の6並びに昭55建告第1791号第3第一号及び第二号による場合である。
表5 継手種類と使用の可否(ルート1、2-1、2-2又は壁式構造に対して)
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ルート3の方法で計算する場合、使用してもよい継手種類、使用箇所、部材種別及び集中度は表6による。なお、ルート3の計算方法とは、令第82条の3、及び昭55建告第1792号及び平19国交告第594号による場合である。
表6 継手の種類と使用の可否(ルート3の方法に対して)
(注)↓は○印のついている下位の部材種別と仮称して計算してある場合には、当該継手を使用してよいことを示す。部材種別の記号、FA、FB…WDは昭55建告第1792号第4に示されている部材種別の記号である。
- 鉄骨鉄筋コンクリートの部材では、鉄筋を全数継手とする場合でも、表5及び表6を用いる時は半数継手と見なす。
- 継手部分でも、原則として日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS5鉄筋コンクリート工事」の規定の鉄筋のあき及びかぶり厚さを確保する。
2-3 設計(鉄筋の間隔・あき) JASS 5 抜粋
- 継手は、鉄筋の直線部に設けるものとする。
- 継手位置、集中度等を変更する場合は、監理者、現場係員の承認を受けるものとする。
- 同一鋼種としては同径間及び1サイズ違いまでとする。
- 異鋼種異径間継手(SD345D-25+SD390D-29)の継手施工を可能とする。
- 鉄筋のあき、鉄筋の間隔は JASS 5 解説抜粋の表3鉄筋の間隔・あきの最小寸法とする。
注)1)最外径は、公差±1.5mm 2)数値以上